障害のある息子がいたから~その6(壊れた…)~
その日は、来るべくしてきたように思います。
ソファーに座っている長男の前を私が通っただけで、ものすごい形相で、睨む→立ち上がる→襲い掛かってくる。
これも当たり前になりつつありました。座ったまま、殴ろうとしてくる拳、突き出す足を、私はひょいひょい避けていました。この時には、ターゲットは私だけではありません。お父さんはしょっちゅう、この攻撃に当たっているのを見ては、「避けかたが下手ねえ~」とさえ思ってみていました。
しかし、その日は違いました。我が子であって我が子ではない、ものすごい異様な異形のオーラをまとっている感じでした。特に「目」を見た時、私の体内に流れている血液の温度が一瞬で上がった気がしました。そして反射的に、長男の前から逃げました。
すると、長男は立ち上がり、私を追いかけてきました。しかし、動作はそこまで機敏ではありません。振り返ってみると、彼は立ち止まって部屋にある鏡に映った自分を見て、睨みつけ、鏡を一撃して割ります。少し進んで、今度は窓ガラスに映った自分を見て、窓ガラスを一撃、蹴り、割ります。そして怒り心頭の様子で、自室に行き、備え付けのクローゼットの扉を力任せに引き、壁との蝶番ごと、外してしまいました。
何しろすごい力です。
私も、家族も、もう限界!!もう、無理!!!
かかりつけ病院に電話をし、主治医に訴えました。「ものすごい暴力的です、止めようがありません!!」
先生は、「薬の服用をやめてください。」「二次救急(※)の連絡先は分かりますか?」「場合によっては警察に電話してください」とのことでした。
長男を見に行くと、クローゼットの扉を外して、あまりの大きさと重さに、本人も耐えかねて一緒に倒れこんでいました。
水分を欲しがるだけ与えて…とりあえず、落ち着いてくれたので、二次救急は呼びませんでした。その先の処置の現実を、私は見知っていたからです。今日は、様子を見よう、と思いました。
その日の夜は、指示通り、抗てんかん薬、向精神薬はすべて止めました。睡眠剤だけ飲ませました。そして、翌日、「また暴れたらどうしよう」とドキドキヒヤヒヤしながらも、車で主治医へ連れて行ったのです。
車で約1時間。緊張の運転だったのを覚えています。
主治医からは、薬の副作用にかかれている「易怒性(いどせい)」、これに当てはまる可能性があると言われました。「薬の影響なら薬をやめれば治まります」と言われて、まだも祈るような気持ちで、てんかんの薬を1種類、医師の指示の下、やめました。
気のせいか、止めて1日で、怒りのスイッチが小さくなり、あの異様なオーラは消えました。
※…精神救急のこと。